『サムリーマン弐の巻 際立つ哉 窓際の山田さん』

劇団虎のこ
作・演出:金子裕
出演:吉川裕朋、金子裕、村岡大介、芳賀恵子、西慶子、皆福百合子、貝藤菜緒子、菊地麻利子、朽木正伸、坂本文子(Queen B)、いぬいりさこ(Queen B)、佐藤和津恵(㈱ぱれっと)、香坂夏希(㈱フェザード)、藤川俊生(Breath)、麻倉卓也(フラッグス ファイブ)、國吉淳次(B-BOX)、鈴木智、青木悠、益子由美子、三遊亭鳳志(師匠鳳楽)、神田京子(師匠陽子)、渡邊真由美、井上紗也香、白岩愛香、高野麻衣子、寺元由嘉、宮崎志野
於:池袋 芸術劇場 小ホール1
観劇日時:2006/04/21 19:00



「何が正しいのかなんて分からないわけですよ。だからね、僕はね、自分が正しいと思うことをやろうとね、思うわけなんですよ!」


徳川幕府開闢より400年余。
いまだに鎖国は続いていた。
だが、いかに門戸を閉ざそうとも、諸外国からの影響は免れることはできず、幕府は国営企業に、諸藩の大名も巨大企業に変わっていった。
かつて武士と呼ばれた人々も、ざんぎり頭にスーツをまとい、満員電車に揺られて会社へと通勤する毎日。
そんな変わっていく世の中にあっても、変わらないものもあった。武士の魂、刀もその一つ。
徳川家公認の企業に勤め、その印として特別に帯刀を許された人々。
そんな彼らを世の人は羨望と尊敬の念をこめてこう呼んだ。
“サムリーマン”、と。

主人公山田団十郎は、東大出で将来を嘱望され、若くして海外部の部長にまで就いたエリートだったが、とある事情で会社を辞職。しかし生活のために、義兄のコネを頼ってまた同じ会社の営業二課に配属される。
風変わりな同僚たち、慣れない仕事に戸惑う毎日。自宅に戻れば、実家から押しかけてきた実母と嫁とのバトル、娘は娘でこともあろうに通学する高校の教師と付き合いだす始末。
更に、営業一課との確執に会社内の派閥争い、業務上横領事件まで絡んできて……。
 
「武士道」の名の下に統一された道徳観念を持つ世界の、ごく普通の(?)会社員の話。
どこまでいっても武士は武士。
切腹や手討ちも“業務命令”で済まされるという、ある意味ものすごい世界観。
でも、その中で生きてる人々は、ちょっと変わったところはあるにせよ、それぞれに悩みを抱えたごく普通の人々。
何のために自分は生きるのか?家族のため?会社のため?自分のため?
一度は自分を見失った主人公が、少しだけ前向きに人生を捉えられるようになる。その姿に素直に共感できるような、そんな芝居だった。
 
主人公を始め、妻、実母、娘、義兄でもある会社の上司、同僚などなど、それぞれの登場人物のキャラも立っていて、これだけ大人数が出ていても「あれ、これ誰だっけ?」というようなことも無かった。
個人的には、山田さんの奥さんとお母さんとの勝負、蛇沢さんと三宅係長の大ボケコンビ、山田さんと雪平さんのお花見のシーンがお気に入り。
佐々木係長と三宅係長の斬り合いも見ごたえあったし。
 
にしても、この劇団にはいい役者さんが揃ってるなぁ。しかも美男美女揃い。体の動きもきれいだし。
3000円でこの芝居なら、お得だと思う。
受付の手伝いをしていた知り合いに勧められて、今回初めての観劇だったが、今後もちょっと注目していきたい。
次回は8/9〜13…稽古の真っ最中だねぇ…。なんとか観にいけると良いのだが。