『ENDLESS TRIP』

PEOPLE PURPLE
作・演出:宇田学
出演:森下仁佐恵、蓮森美どり、濱谷晃年、柏村有美、東本康裕、伊部夢花、駒井美輪、鎌田亜由美、北原絢子、タッシー、中西加奈枝、沖元大輔、内田美咲、畑原郁弥、宇田学、植村好宏、石原善暢(演劇集団キャラメルボックス)、山根基嗣
於:池袋 芸術劇場 小ホール2
観劇日時:2006/04/15 18:30


 
「桜って、出会いと別れの象徴やと思うんです」
「こんなに麻酔が効かない人は初めてだわ」
「完成してるんです、時間移動理論」
「あんた、ウチの妹になんかあったら、許さへんで」
「みんな、ご飯ヨ、ピリ辛コーヒー四川風ネ」
「神の元へ召されるのです。これほど嬉しいことはありません」
「神様、今度生まれてくるときは生命を下さい。……バイバイ!」
「悪かったな、白黒の熊で」
「もう子供じゃないんだから!」
「貴様らも俺と同じ力を!?」
「どうした、撃って来い!来ないなら、こっちから行くぞ!!」
「世界は、こんなにも美しかったんだ!」
「僕が、あなたを守りますから」

 
2106年。度重なる戦争により荒廃し、一部の特権階級者が全てを支配する世界。
虐げられる人々の光となったのは、盲目の少女ジュン。
彼女は他人の傷を治し、魂を呼び戻す不思議な力を持っていた。
ジュンを旗印に民衆が立ち上がろうとした矢先、一発の凶弾がジュンの命を奪う。
残された希望は唯一つ、100年前にジュンと同じ人生を歩んだ女性、マキの命を救うこと。
イムリミットは24時間。
人々の、世界の命運を変えるべく、5人の若者は、今、時を超える……。
 
「パラレルライフ」─100年の時を隔てて、別の人物が同じような人生をたどる現象。アメリカ大統領リンカーンとJ.F.ケネディの例が知られる─を下敷きとしたSFアクション作品。
 
関西の劇団ということで、物語の舞台も大阪だったり京都だったり。出演者も当然あちらの言葉で喋る。
歯切れよく、テンポよく交わされる関西弁は聞いていて小気味よかった。
 
SFということで、衣装やセット、小道具にも力を入れており、100年後の荒廃した世界というファンタジーを伝える一助になっていたと思う。
 
パラレルライフというアイディアも面白いと思う。

が、その全てを打ち消して余りあるどんでん返しが終盤に待ち受けていた。
 
物語の終盤、犠牲を出しながらも未来からの追手も撃退し、何とか守りきった、
これで100年後の運命も変わるぞ、さぁいざ未来へ帰ろう、とした瞬間。
それまで一切登場していなかった人物の手によって射殺されてしまうマキ。
撃ったのは、マキの姉からの通報で駆けつけた刑事。
刑事本人は「俺が撃ったのか?……違う、俺じゃない、俺じゃないんだ!」と錯乱して逃げ出し。
なぜ彼がそんな行動を取ったのかの説明は、たった一言、「しまった、パラレルライフだ!」
 
………。
いや、ちょっと待て。
そいつはいくらなんでもアンフェアじゃないかい?
今まで展開されてた物語はいったいなんだったんだ?
思わず問い詰めたくなるこのどんでん返しに呆然としているうちに、話は終わってしまった。
 
いやぁ、いくら観客の意表をつく展開とはいっても、そっちに展開したらマズいんじゃないかと。
なんかもう、その一点だけで“残念”な感じになってしまった。
せっかく割と好みのネタだし、役者の演技も好感持てる部分が多かったのに。
 
ちなみにこの劇団、観劇後に観客が自分でチケット代を決める「料金後払い制」を採用していた。
定価は前売で2800円。
果たしてみんないくら払ったのだろう?