『SLeeVe』

Dear My Friend
作・演出:宮城陽
出演:佐藤修幸、中村麗香、福地慎太郎、今日平、大橋麻美、中野裕理、生井景子、大熊真由子、岩田鉄太郎、狩谷孔聖、林田沙希絵、高橋倫平、富岡利佳子(カリフォルニアバカンス)、佐藤信也(疾駆猿)、NAO-G、拾己(F-Style Action Communion)
於:大塚 萬スタジオ
観劇日時:2006/04/13 19:00


 
「ここは、どこだ?お前ら、誰だ?」
「立ってよ、方相氏!立って、戦いなさい!立ってよ!!」
「『何の音?』って思ったね。『もう襲ってくるの?』って思ったろ。『怖い』って思ったなァ?」
「俺は、誰にも頼らずに俺一人で立つための力が欲しいんだよ!」
「あたしはあたしの人生を取り戻すの」
「……手を出すんじゃニャいよ」
「おっちゃん、とうふ、食う?」
「ただ今より百鬼夜行、開始いたします」
「私利私欲に満ちた願いだ。……だが、我が剣を振るうに値する」
「兄ぃ!ここは俺に任せて逃げてくれ!」
「燕鳥様。ここはひとまず」
「わたしはれっきとした女よ。乗り移った体に偶々タマタマがついてただけ」
「誰が降参なんかしてやるもんですか!」
「呪い殺してやる!」
「あんまり、バケモノ苛めんなよ」
「みつる殿はもう十分に頑張りました!もう、降参してもよいのです」
「俺はお前のそばにいる。悔しいけど……幸せになれ!!」

 
大学教授、袖山がふと目覚めると、傍らには“尼”と“豆腐を持った子供”がいた。
“尼”は袖山に、彼が「百鬼夜行」というゲームに参加していることを告げる。
人間と妖怪とがペアを組み、殺しあい、最後まで生き残ったペアが優勝となること。
優勝者には何でも願いがかなうと言われる“迷い家”へ入ることが許されること。
袖山のパートナーは“豆腐小僧”であること。
戸惑う袖山に、だが、他の参加者たちは、容赦なく襲い掛かってくるのだった。
 
人間と人外がペアを組んでのバトルロイヤル。
まるで、どこぞの魔界の王を決める戦いを髣髴とさせるシチュエーションだが、
まぁそれは置いておいて。
 
基本的に妖怪好きな自分としては、にやりとさせられる箇所が随所に。
例えば、
参加者の名前が「京夏」(←京極夏彦)「八雲泉」(←小泉八雲)「山石燕鳥」(←鳥山石燕)「茂木みつる」(←水木しげる)だったり。
“鴉天狗”の兄弟の名前が「大政」「小政」だったり(って、これは清水の次郎長か)。
傷薬を使える“鎌鼬”はちゃんと女性だったし(『うしおととら』ですな)。
“サトリ”や“鵺”、“猫又”という有名どころだけではなく、“豆腐小僧”や“袖引き小僧”、そして“方相氏”(!!)まで登場してて、そのバリエーションは見てるだけで楽しかった。
“白蔵主”や“バーゲスト”という妖怪がいることも知ることができたし。
 
で内容は、というと。
一言で言うと、「惜しい」。
よく出来た作品だと思うのだが、もうちょっと整理したり突き詰めたりしてもらえると、もっと良くなりそうな感触が。
総勢7組によるバトルロイヤルなため、戦略上あっちとくっついたり、こっちを裏切ったり、そっちと利害が一致したかと思えば、どっちにも攻撃されたりと、めまぐるしく敵味方の構図が変わる。
当然といえば当然なんだけど、そのおかげで場転は多いし、人物関係は煩雑化するし、今誰がどういう目的で動いているのかを把握するのに結構なエネルギーが必要だった。
加えて場内がかなり蒸し暑かったのもあって、舞台に集中するのに若干骨が折れた。実際気分が悪くなってしまった人もいたみたいだし。
2時間そこそこの芝居が結構長く感じたのは、そのせいなのかも知れない。
 
また、この劇団の売りの一つでもあるアクション。
いやもう、確かに飛んだり跳ねたりとさすがなのだが、見てて違和感を覚えるのも確か。
思うに、「決めどころ」が分かりにくいんじゃないかと。
いつ攻撃が当たったのか、むしろその攻撃は当たったのかかわされたのか。
前回の『Last Smile』でも感じていたのだが、なんだか全体的に舞のような、ふわふわした印象を受けた。
もしかしたら、初めからそれを目指した動きだったのかも知れないけど。
 
個人的には、各人がなぜこの百鬼夜行に参加することになったのか、なぜその妖怪とペアを組むことになったのか、そしてペアとなった人間と妖怪との関係性をもう少し掘り下げて詳しく描写して欲しかった。
そうすれば、もっと物語の世界に浸れたんじゃないかと思う。
せっかく好きな世界観なので、余計にもっと嵌まり込みたかったな。