『御伽草子』

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作:伊東友也
演出:斎藤康雄
出演:青木悠、一石よしふみ、伊東友也、大窪麻衣、神谷隆、斎藤やすお、島田
邦人、鈴木達也、関谷祐光、多賀啓史、高柳有希、村田麗香
於:アイピット目白
観劇日時:2006/02/06 19:00



 時は平安。大江山に巣食う鬼、酒呑童子討伐を任ぜられた源頼光
 名刀童子切安綱を携え、四天王と共に大江山へと乗り込んだ頼光に、突然異変が起こる。
 自分がどこにいるのか分からず、部下である四天王のことも知らないと言い出した頼光を問いただす一行。
 その問いに答えて曰く、
「わたしの名前は“こと”。1000年後の未来からやってきました」──
 
 一言で言ってしまうと、よくある話。
 “歴史上の人物”と現代人の魂が入れ替わる。
 それによって引き起こされる混乱、衝突、そして和解。
 だがその和解はつかの間のもので、その裏には隠された真実が……。
 うん、こう書いてみてもやっぱりよくある話だ。
 とはいえ、随所に話を面白くしようという仕掛けは施されており、その点は観ていて興味深かった。
 
 んが。
 残念なことに、脚本でも演出でも演技でも粗が目立ちすぎ。
 脚本。
 登場人物が多い上に、平安時代と現代を行ったりきたりして話が進むせいか、話に深みがない。
 「あれ、それってそんなに簡単に納得しちゃうんだ?」というところがいっぱい。
 たとえば、せっかく四天王の一人と、酒呑童子の腹心とが敵同士でありながら恋仲というネタも仕込んであるのに、その部分はかなりさらっと流されてしまったりとか。
 たとえば、頼光が「自分は“こと”という名前で、1000年後の未来から来た」とかいきなり言い出しても、ほんの二言、三言のやり取りであっさり了解しちゃうとか。
 上演時間という枷はあるにしても、もうちょっとそれぞれの登場人物を際立たせて欲しかった。
 演出。
 源頼光や四天王は武士、相手は鬼、よってそれぞれが太刀やらまさかりやら鎌やら杖やらを持っている。
 で、当然戦うシーンもあるわけだが……。
 いかんせんアイピットは狭すぎたかと。せっかくの戦いのシーンが、ご立派な武器のせいでせせこましくなってしまっていた。もったいない。
 また武器の大きさは出ハケにも影響大。武士が敵を追ってハケるのにそのぬるさはちょっと。
 演技。
 何をおいても滑舌・発声。
 何を言ってるのか分からない、声が小さすぎて聞こえないのでは、何をどうやっても台無し。
 その他のことはそこをクリアしてからかなぁ。
 
 いいものはあるとは思うんだけど、いろんなところの瑕疵のために全体的な印象はイマイチ…な感じでした。
 つくづく、もったいない。