『Last Smile』

Dear My Friend
作・演出:宮城陽
出演:福地慎太郎、佐藤修幸、大橋麻美、今日平、中村麗香、中野裕理、生井景子、岩田鉄太郎、杉浦匠、大熊真由子、須永裕一、岸本尚子(Captain Chimpanzee)、綺凛(Good Time)
於:中野ザ・ポケット
 
「惜しいなぁ…」
終演後、最初に思ったこと。
 
張り出しもしてないポケットの舞台の上に、船の艦橋を作り上げ、その周囲の狭い空間でダンスから殺陣まで、まさに所狭しと駆け回る。
その運動量には感心しきり。
「空の上にたった2隻だけ浮かぶ船同士が450年も戦い続けている」という設定も面白いし、「人生をさかのぼってやり直せる笛」をからめたストーリーの展開もうまい。
 
ただ、今ひとつ響いてこないのは何故だろう?
舞台上で展開されている世界が、舞台上だけで完結してしまって客席まで広がってこない。
舞台のツラと客席との間に、透明な幕が一枚立ちふさがってるような。。。
 
あと気になったのは、役者の力量のバランスの悪さ。
動ける人とそうでない人、科白を喋れる人とそうでない人との差が目に付き、一度それが気になりだしてしまうと、そればかりに意識がいってしまって集中でき
なくなってしまう。
もちろんみんながみんな上手いというわけにはいかない(上手いに越したことはない)だろうけれど、それでもやっぱり気になる。
バランスの悪さは、役者同士だけでなく、役者とその役との間にも散見された。
450年続いた戦いに対する思い、お互いがお互いに抱く憎しみ、いつか地面に降り立ちたいという憧れ、登場人物はそれぞれの背景を背負ってそこにいるはずで、だからこそそこに放り込まれた一現代人である西船橋の戸惑いやら憤りに生きてくるし、観客も彼に共感することで物語に入り込めたんじゃなかろうか。
そういう部分での人物の厚みというか動機付けをもっともっと作り込んでくれれば、より魅力的な舞台になったんじゃないかと思う。
 
でも、この劇団の芝居には“次”を期待させるエネルギーがある。
何かをやってくれそうな気がするから、また観にいきたいと思う。
それって、一番大事なことなんじゃないかと思うのだ。