『もしも島田が願うなら』(黒version)

カリフォルニアバカンス
アイピット目白にて。
オススメ度:☆☆☆/コワひ度:☆☆☆★/次回期待度:☆☆☆


末期癌の為、余命3ヶ月という宣告を受けた島田は、残りの人生をどう過ごしたらいいのか悩んでいた。
そんな彼に古久利と名乗る男が接近する。
「君の残りの人生、豊かなものにする手伝いをしてあげよう」
彼に協力の元、同窓会と称して集められる高校時代の同級生たち。
そして彼の心をときめかせる一人の女性。
残り僅かな人生に、少しなりとも張りが出てきたように感じる島田。
だが、そこにはある重大なヒミツが隠されていた……


天然工房の斉藤如子さんと松本雄介さんが音響オペをされている、という事でお誘いを受けて観にいってきました。
なんでも今回の公演は基本設定は共通で、話の方向性が全く違う<黄色(ナンセンスギャグ)>と<黒(ホラー)>の2本立てだそうで。
本日観たのはホラーバージョンの<黒>。


芝居だからこそ生きる仕掛け─「観客に見えているものが、登場人物にそのまま見えているとは限らない」─を非常に効果的に使った舞台でした。
登場人物の一人が、実は別の登場人物の妄想の産物で、周囲の人間は彼の妄想に付き合って“演技”しているだけだった…というオチ。
裏設定が分かった上でもう一度見てみたい、そんな風に思う作りになっていて、その構成の上手さに感心しました。
こういうブラックな話、実は結構好きだったりするので、そういう意味でも楽しんで見れました。


セットも、主な場である居酒屋はかなりしっかりと作りこんであって、かなり雰囲気出てました。
その他の場でも、島田や古久利の部屋では居酒屋の大きなテーブルの足を短くしてちゃぶ台風にしたり、漫画家塚島の仕事場ではホワイトやインクなど小道具が散乱した机を配置したりと、ピンポイントでディテールに凝ることで、上手く違う場所であることを観客にアピールできていたのではないかと思います。


気になった点としては、“壊れた人間”の演じ方が同じ形になってしまっていたこと。
話が話だけに、普通のラインからちょっと外れてしまった人物が何人か登場するんですが、その壊れ方がみんな同じに見えてしまいました。
典型的な“狂った人間”─視線の焦点がずれている、うすら笑い、語尾をぼかす喋り方─をみんながみんなやっていたような印象があり、正直ちょっと不快でした。
せっかくそれぞれの理由で常軌を逸しているんだから、それぞれの“壊れ方”があるんじゃないかな、と。
あと、これは好みの問題なんでしょうが、必要ない笑いを取る為だけのギャグや話には必要ない人物もちらほら存在したのも気になりました。


全体の印象としてはよくまとまった舞台だと思います。