『Letters』

劇団夢のミルクこうじょう
作・演出:早川浩
出演:中谷智昭、大沼優記、古川理紗、椿克之、大塚雅子、鶴見祐二、永松泰裕、池田紋子、早川浩史、山本恵太郎、遠藤孝吉(劇団天然カルーアミルク)
於:アイピット目白
 
シラノ・ド・ベルジュラック
コンプレックスの為に想い人(ロクサーヌ)に告白できない男(シラノ)が、同じ女性を愛した親友(クリスチャン)の為に手紙を代筆し、その女性は手紙の文面に心動かされる。
 
基本構図はそのままに、中華的な雰囲気のファンタジーに仕上げたこの舞台。
 
観劇後のこのすっきりしない感じは何なんだろう…?
 
考えるに、まぁ大部分は脚本が好みに合わなかったってことらしい。
 
まずはシラノのポジション担当、シアユイ。
原作のシラノは剣の腕も立ち、文才もあり、ただ容姿にだけ問題があったために積極的になれない男なのだが、シアユイは違う。
持っているのは文才のみ、腕力も度胸も男気も甲斐性も、その辺りの男らしさは皆目持ち合わせていない情けない男として設定されている。
きっと本当はそんな彼も芯の強さは持っていた、という設定なのだろうが、その強さを発揮するかしないかのうちに、敵は自滅してしまったので結局よく分からずじまい。
得られるはずのカタルシスがないまま、芝居が終わってしまった感がある。
 
で、原作ではクリスチャンにあたるチュンチエ。
これはもう好き嫌いの問題になってしまうのだが、発声というか声の色に違和感を感じてしまう。
もしかしたらこの役者の個性なのかもしれないが、いくらなんでもあの作り声は。。。
いや、好きな人は好きなのかも知れないけど、ね。
 
んで、ロクサーヌであるシャーヤ。
物語の構成上、二人の男に愛される魅力を持っているはずのこの女性、実は結構言動がキツい。
襲撃者を前にまったく役に立たないシアユイを責めるチュンチエから、シアユイをかばうと見せかけて「シアユイに期待しても無駄よ。昔からそうだったじゃない」とぐっさり。
無邪気こそ一番残酷ってことですかね。
 
というわけで、結果的に残念ながらメインである3人の誰一人として共感できなかった。
話の方向性としては面白いと思うんだけどなぁ。