『ピノキオショー2004』

CAPTAIN CHIMPANZEE
中野ザ・ポケットにて。
オススメ度:☆☆☆/成長度:☆☆☆☆/次回期待度:☆☆☆★


ヤクザの抗争に巻き込まれる形で最愛の妻とそのお腹の中の子供を喪った町医者、大風呂敷万太郎。
生きる気力を失って酒に溺れる毎日を過ごしていた彼の元に、ある日一人の少女が運び込まれる。
しかし、それは少女ではなく、精密に作られた機械人形、サポートロボットだった。
起動スイッチを押した彼に、ロボットは尋ねる。
「何か、お役に立てることはありませんか?」
最初は相手にしていなかった万太郎だったが、ピノキオと名づけたそのロボットの一途な姿勢に、次第に心を開いていく。
が、ピノキオは遥か未来から送り込まれたロボットであり、その内部には世界を滅ぼす威力を秘めた兵器と、彼女を操ろうとする科学者の人格が潜んでいた……。


機械であるロボットに芽生える意志、そして心。
それによって癒される人々、そしてそれが為に引き起こされる悲劇。
いい話なんですよねぇ、確かに。
機械であるからこそ、人間だけでなく犬や霊の声も聞くことが出来、その橋渡しとなれるという設定は、上手いなと思いました。

清水仁美さん演じるピノキオの可愛さが、今回の一番の魅力だと思います。
この役は清水さんの当たり役ではないでしょうか?
以前のアララトⅠ世や不安の化身の時と比べると本当に見違えるように上手くなったなぁ、と感心しきり。
ラスト近く、ボロボロになり上手く喋れない状態で、それでも亡くなった人たちから預かった言伝を伝えるシーン、抑揚のない所謂“ロボット喋り”で淡々と語るピノキオの姿には思わず涙ぐんでしまいました。
以前の作品『FIRE BIRD』にも登場した歴史管理局のナオミ&アキラの再登場も、前作を観た身としては嬉しかったり。個人的にはカスパル教授にも出てほしかったけど。

話は面白いんですが、反面気になるのがその長さ。
今回の上演時間は、約2時間半でした。
人間の集中力の持続時間は2時間という定説(?)もありますし、やっぱりちょっとキツかったかなぁ、と。
ストーリー的にもあちこちに手を広げすぎて、結局まとめきれずに力技で終わらせた感がありました。
もう少しメインのエピソードに絞って整理してもらえると、時間も短くすっきりとした印象になるのではないでしょうか。
あと、やはりタイムトラベルものはストーリーが散漫になるというか、破綻してしまう可能性が高いのではないかと。
最終的にはピノキオ一人が犠牲になって、全ては“無かったこと”になりましたが、その歴史ではみんな幸せになれたのか?とか思ってしまいます。
少なくともピノキオが訪れなければ万太郎は立ち直れないのではないか、と。
こういう事を思うのも、それだけピノキオという存在が魅力的に表現され、だからこそ彼女一人に全てを押し付ける形になってしまったのが残念、ということなのかも知れません。
つまり、結局作者の掌で踊らされてる?(^^;

次回は9月に昨年池袋演劇祭優秀賞受賞作品、『ヒーローなんかいらない!』の再演だそうです。
芸劇小ホールというあのだだっ広い空間で、どういう舞台を観せてくれるのか、今から楽しみです。